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蔵前のゲストハウス「Nui. HOSTEL & BAR LOUNGE」様にて、ソファと椅子の座面張り替え施工を担当させていただきました。 使い込まれた家具の風合いを大切にしつつ、空間になじむ上質な本革で新たに仕立て直しています。

国内外から多くのゲストが訪れるNui.様のラウンジは、人と人が交わる心地よい空間。その中で長年使い込まれた家具は、時間とともに味わいを増す一方、ソファーや椅子の座面部分の劣化が進んでいました。今回は、愛着ある家具をそのまま活かしつつ、より快適にお使いいただけるようリメイクというかたちでお手伝いさせていただきました。

元々店内にあったソファは、Nui.様のスタッフの皆さまがDIYで張り替えを行われたもの。 思い入れのある家具として大切に使われていましたが、長年の使用により革のたるみや表面の劣化が進み、乾燥やひび割れも見られる状態でした。

使用した革は、しなやかさと耐久性のバランスに優れたものを厳選しました。 人の出入りが多く長時間使用されるラウンジ空間では、座り心地の柔らかさだけでなく、日々の摩擦や湿度変化にも耐えうる素材であることが重要です。 選んだのは、自然な銀面を活かしたナチュラルな仕上げの本革。手にしたときのやわらかさと、使い込むほどに深まる艶を両立しています。 色味は、Nui.様の店内に漂う温かな照明と木の質感に馴染む上品なトーンを採用しました。

大きなソファは一脚あたり革をほぼ丸々1枚使用し、贅沢に張り込んでいきます。 座面の形状やクッションの沈み具合を細かく確認しながら、まずは革を裁断していきます。 伸びやしなりの方向を見極め、最も自然な張りが生まれるように配置します。

カットした革は一気に張り込むのではなく、中央から外側へ少しずつテンションをかけながらタッカーで固定していきます。 この張り込みの力加減が、表面にできるわずかなシワや波の出方を左右するため、慎重に工程を進めます。 特に四隅の処理は仕上がりを大きく左右する重要なポイントです。 DIY施工では角の処理が難しく、シワの寄り方にムラが見られましたが、今回は革の厚みや伸びを指先で感じ取りながら、均一にテンションをかけて丁寧に整えています。 革の厚みを感じさせないように、角の処理では革を細かく寄せながら均一に張り込みました。 一つひとつの折り込み角度を微調整し、シワの流れを整えることで、全体のラインがすっきりとまとまります。 プロの手仕事ならではの精度と美しさが際立ち、シンプルな形状の中にも丁寧な仕上げが感じられる仕上がりとなりました。

一枚革ならではの豊かな表情と存在感を損なうことなく、空間全体に高級感と落ち着きをもたらす仕上がりとなっています。控えめながらも存在感のある色合いが、ラウンジ全体に落ち着きを与え、訪れるゲストをゆったりと迎える空間を演出しています。

ソファの張り替えと並行して、店内で使用されている椅子の座面も同じ本革で張り替えを行いました。椅子の座面は長年の使用により一部が破けてしまっており、表面の傷みが目立つ状態でした。 今回はソファの張り替えで使った本革の残りを活かし、同じ素材とトーンで座面を仕立て直しています。 空間全体の統一感を保ちながら、素材を無駄にしないサステナブルな施工となりました。

まず元々の座面を丁寧に分解し、既存のタッカー跡やホチキス針を取り除きながら、古い革を剥がしていきます。

その後、新しい革を座面サイズに合わせて裁断。 伸びやシボの向きを確認しながら、最もきれいに見える位置でレイアウトします。 張り込みは中央から外側へ、均一なテンションをかけながらタッカーで固定していきます。

角の部分は特に神経を使い、革の伸び具合を指先で感じ取りながら、シワが均一に寄るよう少しずつ張り込んでいきます。 一度に引きすぎると革が歪んだり波打ったりするため、何度も位置を微調整しながらタッカーで固定。 カーブの美しさとテンションの均一さを保つことで、張り面全体が自然に整い、手仕事ならではの柔らかいラインに仕上がります。 こうして仕上がった座面は無駄な力みがなく、見た目にもすっきりと落ち着いた印象に。 細部の積み重ねが座り心地の良さにもつながる、大切な工程です。

全体のバランスを見ながら角や曲線部分を微調整し、最後に余分な革をカットして縁を美しく仕上げました。 フォルムに合わせ、すべて手作業で仕上げることで、端正でしなやかな座面が完成します。

長い時間を経て使い込まれてきたNui.様のソファと椅子が、再び新しい革をまとい息を吹き返しました。 DIYで大切にメンテナンスを重ねてこられた家具に、今度は職人の手を加えることで、素材の魅力と空間の個性がより深く結びついたように感じます。

施工後、スタッフの方々からは「空間全体が明るくなった」「革の香りが心地よい」と嬉しいお言葉をいただきました。 日々多くの人が集うラウンジで、この家具たちが再び活躍する姿を思うと、私たちにとっても大きな喜びです。 これからもNui.様の空間で、革が少しずつ馴染み、風合いを増していく様子を見守っていきたいと思います。 このたびはご依頼ありがとうございました。

レザーインテリア エクステリア 革施工のご案内

アトリエケーアイでは、革という素材を使い、手の温もりを大切にし、手で出来ることの可能性を追求した仕事を皆さまにご提供しています。革小物やバッグはもちろん、その経験を活かしインテリアや家具等幅広く製作させていただいております。革でこんな事がしてみたい、こんなもの革で作れるの?などのご質問やご提案がございましたらお気軽にお問い合わせください。また、ホームページにてOEMの流れや過去の製作事例をご紹介しています。ぜひご覧ください。