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CACTUS(カクタス)
ブランドインタビュー

Keiji Kumagai

熊谷渓司

Kosuke Sugita

杉田耕介

この度、Atelier K.I.がOEM生産に携わった、新進気鋭の革製品ブランド『CACTUS(カクタス)』。

2020年4月に発足したばかりのニューブランドで、サボテンから作られた環境負荷の少ない「カクタスレザー(※)」を使用した製品づくりを提案しています。環境に配慮した素材を広め、より地球に優しい世の中にしていきたいという想いを胸に、一念発起で創業しました。

※:メキシコのスタートアップ企業、デザート(DESSERTO®︎)が開発したサステナブルな新素材

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直近では、クラウドファンディングにおいて200%超の資金調達を達成するなど、日増しに関心が高まっている注目ブランド。今回は、「CACTUS(カクタス)」の熊谷渓司氏と杉田耕介氏にAtelier K.I.代表/池田耕平がインタビューし、同ブランドの魅力や今後のビジョンについて迫ります。

――メンバーとの出会い

池田:ブランドは、4人で運営しているのですよね。元々どこで知り合ったのですか?

熊谷:知人からの紹介やコミュニティを通じて、偶然つながりました。学校や出身など共通点がないメンバー(熊谷氏は北海道札幌市、杉田氏は兵庫県加古川市が出身)で、本業もそれぞれ違うことをしています。ただ、そこが多様性もあって面白い点だと思っています。革製品が好きという共通項こそありましたが、もう少し根底の部分には「何か面白いことをしたい」という想いが全員にあって。無二の出会いを求めていた中で、仲良くなったのがきっかけです。

池田:本業もある中でのブランド運営に苦労はありますか?

熊谷:ブランドを立ち上げたのは1年半前(2020年4月)なのですが、休みの日や仕事終わりに作業することで、差し支えがないようにしています。自由な時間はほとんど無くなりますが、それだけ情熱を傾けて製品づくりに没頭しています。

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――ブランド誕生秘話

池田:現行メンバーとは、カクタスレザーにたどり着く以前に出会っていたのですね。じゃあ、もしかしたら違うものが出来上がっていたのかもしれないわけだ。どこかのタイミングで「このアイデアでいこう」とビビビッときた瞬間があったということですか?

熊谷:ピンときたタイミングは、まさにカクタスレザーに出会った瞬間です。環境問題に対応した事業を模索していたことも、決め手としてあったかと思います。非常にサステナブルで、素材自体も秀逸なのに、当時の国内ではまったく商品化されていなくて勿体ないな、と。

池田:どうやってカクタスレザーのことを知ったのですか?

熊谷:当時、僕はインターネットでブログを書いていました。環境問題に関してひたすら情報を集め、自分なりにまとめて考察するという内容です。その過程において、ファッション分野でも環境問題が重大テーマとして挙がっていることを知り、レザー製品にも植物由来の素材を使おうという世界的なムーブメントがあることに辿り着きました。

池田:なるほど。廃棄の問題とか、ハイブランドほど取り組んでいますもんね!

――カクタスレザーを使った製品開発で大変なこと

熊谷:カクタスレザーの扱いは、なかなか難しいですよね。

池田:糊がのらない、二度塗りしないといけない、ネンがはいらない、箔が入れづらいとか…。通常の革素材の方が、色々な意味で馴染みが良くて。機械自体も、おそらく革に合わせて進化してきたものだから、牛革などとは明らかに違いました。箔に関しては、どうしても滲んでしまうから、普通に押すよりゆっくりと時間をかけて入れなきゃいけなかったですね。僕の中で、カクタスレザーは上に膜が張っているようなイメージ。そこが耐候性や耐水性を強くしていて、持ちがよくなっているのではないかと勝手に思っています。(笑)

カクタスレザーの扱いについて池田が発言している最中、熊谷氏と杉田氏が顔を見合わせてうなずいた場面が、製品開発の苦労が伝わり印象的なシーンでした。製品を一見すると、サボテンで作られたとは到底思えず、普段見慣れている革素材と遜色がないように感じます。難易度の高い箔押しを実現した製品について「苦労の賜物です」と、笑顔がほころぶ瞬間にモノづくりの真髄が垣間見えました。

――ブランドコンセプトについて

池田:環境問題に目を向けてもらおうというのがコンセプトですか?

熊谷:はい、「環境問題を解決したい」というメッセージを伝えていきたいです。ただ、キャッチコピーなどのアプローチはいまだ検討中でもあります。お客様の声を聞くと、すでに環境問題に関心のある方々が購入していただいているという傾向にあって。これから固めたい部分でもありますが、そういった方々の自分を表現するアイテムとして選択肢になれれば良いなと考えています。

池田:継続的に何かをやっていきたいという意思を強く感じますね。環境問題も、カクタスのブランディングも、継続性を大事にしているのかなという印象を受けます。どちらも、続けていかないと解決しない。「継続性」が大事になってくるブランドなのかと、勝手に思っています。

熊谷:環境問題も社会問題もすべては根本で繋がっていて、バランスよく解決していく必要があると考えています。しかしながら現状は、自分が買っているものと裏側の繋がりに気付けていないことが多いと思うのです。実は自分の買っているものが、途上国での貧困労働や環境破壊などの悪い影響を及ぼしているとか。そういう繋がりが広く知られれば、ひとりひとりの考え方や行動が変わると思うのです。環境問題について提起している人は沢山いますが、それをサポートするシンボリックなアイテムになったらいいなと。

池田:環境問題に興味を持っていない人に対しては、どうアプローチしたいと考えている?

熊谷:すでに環境問題に関心がある方々は、自分自身がメディアのような立場になって発信するぞ、という気概が強い傾向にあると感じます。だから、そういった人に届けば、今時点では興味を持っていない人にも自然と広がっていくと考えています。

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――Atelier K.I.との出会いについて

池田:最初、杉田さんがクイズ形式で出題してくれたんですよね。おもむろにカクタスレザーを取り出して、「これ、何に見えますか?」って。そこから「実はコレ…」と説明したものだから、インパクトは強かったかもしれない。革職人として試してもらったのだけど、わからなかったです。

杉田:そんな風に言っていましたか?(笑) 僕らは、はじめは本当にハンドメイドレベルでやっていて、そこで色々なマルシェに参加していたのですが、今はさらにクオリティを上げるフェーズになっていて。共に仕事をしていける国内の製造者さんを訪ねて回っていたのです。その中で、僕らの背景をしっかり汲み取ってくれたり、多方面でフォローしてくださったので、「この人となら」と、池田さんにサポートをお願いしました。カクタスは服飾や革を学んだメンバーがいるわけではないので、そういうところでフォローしてくれる人に出会えたのは本当に幸せだと思います。

――モノづくりで課題に感じていること

池田:今時点で困っていることは何かありますか?

熊谷:はい、悩んでいることはあります。牛革商品なら、質感のイメージが湧くので選び取りやすい面があると思うのですが、カクタスレザーだと、見たこともなければ触ったこともないという方ばかりなので、リアリティのあるサービスやアプローチを考えているところです。

杉田:マルシェに出店することもその一環ですが、モノを通じてお客様とコミュニケーションを取り続けられたらと思っています。

熊谷:つまるところ、そのコミュニケーションをどうするかが課題ですね。アメリカの新興ブランドみたいに、卸したりせずウェブサイトなど自分たちの販売経路で世界観をきちんと伝えていった方が良いのかな、とか。

池田:卸すと、ブランドの世界観がお客様にちゃんと伝わるか不安ですもんね。ウェブサイトはいつ頃できる予定ですか?

熊谷:本番は11月(2021年)を目途に動いているのですが、プロトタイプは今月(8月)にリリースしました。

池田:まずは、夏に発送する商品が皆さんの手に渡って、どんな反応が返ってくるかが楽しみですね。

熊谷:こういった持続的な活動では、使ってくれたお客様と真摯に向き合うことが大切だと考えているので、ホームページやSNSを駆使しながら、使用感などのリアルな声を捉えていきたいです。

池田:送ったらおしまい、じゃないから良いですね。

熊谷:そこは今後も、ブランドで大事にしたいところです。環境問題に関心のある方々が購入して長く使い続けてくださることもそうですし。お客様自身が環境問題に関する価値観を発信するケースでも、ブランド側からどうサポートするかが真のカスタマーサクセスにつながると思います。

池田:さすが、締まりましたね!今日はありがとうございました!

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*** 編集後記 ***

「将来性も推進する力もあって、これからが楽しみなブランドがある」という池田の声で実現した、今回のインタビュー。皆様も今後「カクタスレザー」という言葉を耳にする機会が増えてくるのではないでしょうか。

クラウドファンディングの目標達成について、熊谷氏と杉田氏が「ひとえに皆様のおかげです。ありがとうございます」と何度も感謝を述べている場面、そして、お客様へのアフターフォローについて余念がない点からも、実直で誠実な人柄が垣間見えました。

今後は、カラーだけでなく製品のバリエーションも増やしていく計画を練っているといいます。「商品性とクオリティを高めながら、未来を切り開くモノづくりを進めていきたい」と、真剣な眼差しで話す様子をみて、この先が益々楽しみになりました。

環境問題について一石を投じるブランド「CACTUS(カクタス)」の革製品を、ぜひお手に取って体感してみてください。

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